ヨガニドラ(Yoga Nidra)は「眠りのヨガ」と呼ばれ、リラックス効果の高い練習法として人気があります。
横になって行うため、初心者でも無理なく取り入れやすく、「寝るだけで瞑想になる」とも言われています。
しかし、ヨガニドラの本質は「ただ眠る」ことではありません。
正しい理解と誘導の仕方を知ることで、単なるリラクゼーションを超え、心の深い部分を整えるヨガへと変わっていきます。
ここでは、ヨガ心理学の視点から、ヨガニドラの意味と目的、そして誘導法の基本をわかりやすく解説します。
ヨガニドラとは?本来の意味と目的
ヨガニドラとは、サンスクリット語で「ヨガの眠り」を意味します。
身体は眠っていても、意識の奥は静かに目覚めている、その不思議な状態を指します。
多くの人が「ヨガニドラ=リラックスするヨガ」と捉えていますが、本来の目的は意識の再統合にあります。
つまり、外の世界に散らばった注意を内側へ戻し、感覚・思考・感情をひとつに調和させていくのです。
この状態では、脳波が深いリラックス状態(α波〜θ波)に入り、自律神経が整い、ストレスや不安が自然にほどけていきます。
それは、ただの休息ではない状態です。
単なる休息ではない!とされていますが、
休息をとってリラックスすることは非常に大事なので、ストレスフルな方や、疲労回復の意味で当協会では取り入れています。
眠りのヨガと呼ばれる理由
ヨガニドラが「眠りのヨガ」と呼ばれるのは、実際に脳が眠りに近い状態になるからです。
身体は完全にリラックスし、筋肉の緊張がほどけていく一方で、意識はインストラクターの声を聞きながら静かに目覚め続けています。
この「眠りながら目覚めている」状態が、ヨガニドラ独特の深い癒しを生み出します。
短時間でも、深い睡眠を取った後のようなすっきりした感覚を得られることが多く、慢性的に疲労を感じている人に効果的です。

ヨガクラスの最後に行われるシャバーサナと似ていますが、ヨガニドラはより意識の旅に重点を置く瞑想的なプラクティスといえます。
身体を休めながら、心の奥へ旅をする。それがヨガニドラの真の魅力です。
ヨガニドラと変性意識状態
ヨガニドラの本質を理解するうえで欠かせないのが、「変性意識状態」という概念です。
睡眠と覚醒の間
これは、私たちが日常で体験している“通常の意識状態”とは異なる、意識の状態です。たとえば、朝の目覚める直前や、夜に眠りに落ちる瞬間。
夢と現実の境界線が曖昧になり、時間の感覚も分からなくなっていくような感覚。そのとき、私たちはまさに「変性意識状態」にあります。
ヨガニドラでは、意図的にその状態をつくり出します。
身体を完全に休ませながら、言葉の誘導により、脳波はα波からθ波へと移行し、深いリラックスと集中が同時に起こります。
このとき、表層の思考が静まり、潜在意識が穏やかに開いていきます。
だからこそ、ヨガニドラの最中に浮かんだイメージや言葉(サンカルパ)は、無意識のレベルに深く届き、現実の変化を促す力を持つのです。
心の扉が開いている状態
心理学でいう「トランス状態」とも近いこの意識の変化は、催眠や瞑想、祈りの時間などにも共通する、人間本来の回復モード。
ヨガニドラはその状態を安全に導き、再統合するための“心の誘導の技術”と言えるでしょう。

参考
ヨガニドラのやり方(基本の流れ)
ヨガニドラは意識を内側に向けていくことで、心と身体を整える練習(ワーク)です。必ずといった型はないですが、基本の流れは次の3ステップで進めます。
1. ボディースキャン
頭の先から足先まで、順番に体の感覚に意識を向けていきます。
緊張している部分や痛みのある部分もただ観察し、評価や判断はせずに受け入れます。これにより意識が思考から身体感覚へ移りやすくなります。
2. 呼吸への誘導
呼吸の音やリズムに意識を向けます。呼吸に注意を向けることで、リラックスし<適度な眠気>を感じることで、変性意識状態への準備が整います。
参考
→ヨガ呼吸の誘導の言葉 | 初心者向けレッスンで実践できるポイント
3. サンカルパ(決意)の設定
サンカルパとは、サンスクリット語で
「サン=真実・本質」
「カルパ=誓い・意志」
という意味があります。
ヨガニドラの最初と最後に、短い言葉で“自分への誓い”を心の中で唱えます。
いっても、何かを頑張って叶えようとする目標ではありません。
「私はどうありたいか」
「どんな自分で生きていきたいか」
そんな穏やかな気持ちで、自分の内側(心の奥)に言葉を置いていくような時間です。
誓いという言葉が、誤解を与えてしまうかもしれないです。頑張っていくための目標ではなく、何かを叶えるためのものでもなく、「自分の幸せとはどんなものか、その最低限の、根本的な感覚」と言えば、ニュアンスで伝わるだろうか…。
サンカルパも奥が深く面白いので、別記事でお伝えしようと思っています。ここではあまり深く考えない方が良いかもしれません。
むしろ最初から言葉がはっきりしていなくても大丈夫。ヨガニドラを続けていくうちに、少しずつあなたの中から自然に見つかっていくのが理想です。
参考
→ヨガで自己肯定感が上がる(高まる)しくみ | 「ありのままを愛する」の落とし穴
サンカルパは誓いの言葉と言われているが
サンカルパは、「言葉を唱える」と一般的に言われていますが、当協会としては言葉は必須ではないと考えています。時として自分だけがわかる「感覚」「感情」を五感を通して身体からキャッチしていることが大事です。
ヨガニドラ実践動画

ヨガニドラを身に付けるとインストラクターとして成長できる
・明確なアサナ(動き)がないので、生徒は「心」に意識を向けるようになります。
・シェアリングの時間を設けたら、生徒は自分の内面を打ち明けてくれるでしょう。結果、クラスの場の力が上がります。
・一般的なフィットネスや体操のようなヨガクラスから一歩上にステップアップできます。
また、協会の講師として「ヨガ誘導の言葉」の講座を開催してきてわかることですが、アクティブな誘導とリラックスする誘導をどちらもできる人は少ないです。

ヨガニドラを身につけることで超リラックスの誘導が身につきます。そうすると普段行っている一般クラスに強弱、緩急、を作れるようになります。
例えば、戦士のポーズの後のチャイルドポーズ
※その両方の誘導が、一定(同じテンション)の先生がほとんどです。これを明確に緩急を付けるだけで、言葉がスコーンと体の奥に入るような感覚を受けます。
はっきりと言語化するのが難しいのですが、誘導がノッペリと一定のクラスよりも、緩急をつけられる先生のクラスの方が圧倒的に良いです。
このことに気づいていない先生がほとんどですので、ここに<伸びシロ>があると思います。
※これらは、ヨガ誘導の言葉を専門に研究・実践してきた経験に基づきます。
疑問に答えるQ&A
Q1:生徒が途中で寝てしまったらどうすればいいですか?
A1:ヨガニドラでは、生徒が深くリラックスして眠ることは自然な反応です。無理に起こす必要はありません。誘導は穏やかに続け、終了後に軽く呼吸や体の感覚に意識を戻すよう促すだけで大丈夫です。
Q2:声のトーンはどのくらい柔らかくすればいいですか?
A2:基本的には、柔らかく穏やかに話しましょう。だだ、柔らかすぎてもフワッとした気持ちになるだけです。理想は柔らかすぎず、硬すぎず。硬すぎると緊張を誘発します。
これは人から学び、身につけるしかありません。
参考
→ヨガインストラクターにとって声はなぜ大事?心に響く誘導の秘密を解説
Q3:サンカルパはどのタイミングで入れるのが良いですか?
A3:ボディースキャンや呼吸で体と心が落ち着き、変性意識状態に入ったタイミングが理想です。無理に早く入れず、内側の感覚が落ち着いてから短く簡潔に心の中で繰り返すと効果的です。
Q4:ボディースキャンをするのはどういう意味があるんですか?
A4: ボディースキャンを行う目的は主に2つあります。
1. 思考を静かにするため
「何も考えるな」と言われても、多くの人はつい考えてしまいます。そこで体の各部位に意識を順番に置くことで、思考を自然に静めることができます。
頭で難しく考えず、体の感覚に意識を向けるだけで心が落ち着きます。
2. 五感への意識による心の静寂
人間は五感に注意を向けると、自然に思考が静かになります。足先や手の感覚、呼吸、音や温度などに意識を向けることで、頭の中の雑念が減り、心が落ち着いた状態になります。
これらは、マインドフルネスの理論とも共通しているアプローチであり、ボディースキャンの基本的な意図をシンプルに理解することができます。
Q5:言葉を覚えても、なかなかヨガニドラをメインとしたクラスを開けないです。なぜですか?
A5: それは、バックボーンがまだ整っていないからです。ヨガニドラは、セリフを覚えるだけで形としてはできているように見えます。
しかし、変性意識状態やサンカルパを安全かつ効果的に導くには、総合的な理解が必要です。
単なる言葉の暗記だけでは、クラスを提供することは難しく、受講者に満足感を与えることもできません。心と身体のつながりなどの知識を学ぶことで、バックボーンをもち自信を持ってクラスを開けるようになりましょう。
まとめ
公式的にはヨガニドラは「心の再統合」を目的としています。
しかし、疲労やストレスを抱えた現代人にとって、まずはリラックスして“自分を回復させる時間”として取り入れるだけでも十分です。
そこから少しずつ、五感によって自分の心を感じ取れるようになり、人生レベルで自分と向き合得るようになり、より幸せになります。
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