日本ヨガ心理学協会 代表講師SATORUです。
本記事では、「こころのヨガ」とは何か、そしてなぜ“心が整うヨガ”と“そうでないヨガ”があるのかを、ヨガ心理学の視点から解説します。
身体のためだけでなく、心が心地よくなるヨガのヒントになれば幸いです。
こころのヨガとは

ここでいう「こころのヨガ」とは何か特定の流派や、メソッドを指しているわけではありません。
・身体だけでなく、心が楽になるヨガ
・心が癒されるヨガ
・心が整うヨガ
・気づきやブレイクスルーのような心に衝撃を覚えるヨガ
など、何らかのこころの変容があるヨガを意味しています。
ヨガとは何か:そもそもインドでの修行であった

ここで簡単にヨガとは何なのかということをお伝えします。シンプルに押さえておくことで、あなたの中で心のヨガって何なんだろうっていう議題が明確になるかもしれません。
ヨガの起源
ヨガの始まりは、古代インドの僧侶たちが行っていた修行にあります。
もともとは「身体を健康のために整える」ためではなく、心の作用を静め、悟りに近づくための実践として行われていました。
その後、ヨガはインドからアメリカへと伝わり、西洋の人々によって新しい形に発展していきます。
アメリカでは、瞑想や呼吸法よりも「フィットネスとしてのヨガ」が注目され、健康法・ストレスケアとして多くの人に受け入れられました。
日本に伝わったのは、アメリカを経由したこのスタイルが中心です。一方で、インドから直接伝わった伝統的なヨガも存在しており、今日の日本では、この2つの流れが混ざり合いながら広まっている。
※上記はシンプルに表現しています。
ヨガはルートが違っても、背景に心との関係がある

インドのヨガはもちろんのこと、アメリカに渡ってフィットネス化したヨガも、「心」や「精神性」が完全に排除されたわけではありません。
確かに、アメリカでは身体を動かすことや見た目の美しさが重視されました。それでも、どの流派にも少なからず“心を整える”要素が息づいています。
ただし、その扱い方や濃度は、流派やティーチャーによってさまざまです。呼吸や瞑想を深く掘り下げる人もいれば、ポーズの中で自然に心を感じ取る人もいます。
結局のところ、どんなスタイルでも「心」という軸が完全に消えることはない。それが、ヨガの魅力なのだと思います。この記事を読むあなたもそう思っているのでははいでしょうか?
ヨガは先生によって全然違う
様々なヨガの先生からレッスンを受けたことがある人は、疑問に思ったかもしれません。
ヨガのレッスンって先生によって印象が全然違う、でもなぜなんだろう?
同じシーケンスでも、先生の経験・意図でクラスの質が変わる

ヨガのポーズの順番のことをシーケンスといいますが、シーケンスが違うのであれば、違いなんて明確なんです。逆に言うとシーケンスを同じにすれば、ヨガのレッスンは先生が変わっても同じようなものになるんでしょうか?
ある人にとっては、Yes ある人にとっては、No
体だけの動きか、心にアプローチするヨガなのか

ヨガを体の動き、体への効果だけに割り切って開催する先生はいます。
生徒の中にも、心が心地よいという感覚がわからないと言う方もおられます。そんな方たちにとっては、同じシーケンスを同じ時間だけやれば、同じレッスンだと感じる可能性はあります。
ただ、ヨガの目的を心の変容であるとした場合、同じシーケンスを同じ時間やっても、先生によって全く違ったレッスンに感じるはずです。
これが他のエクササイズやトレーニングにはないヨガの魅力だと言えます。
身体と心を同時に整える唯一の方法、それがヨガ

「ヨガとは体だけでなく、心も整えるものです。」
ヨガを続けている人なら、スタジオや教室でヨガインストラクターがそう言っているのを聞いたことがあると思います。
ストレッチやエクササイズとの決定的な違い
ヨガはストレッチとは違う、とは言え、ストレッチは確かに行っています。ヨガとストレッチには似たような動きもあります。
ヨガの先生がストレッチ理論を学ぶことも大変重要だと思います。
では何が違うのか?
シンプルに言うと目的が違います。ストレッチの目的は体をストレッチすること。ヨガの目的は体をストレッチさせることで、心を整えることであるということ。
ここで言う整えるというのは、
・癒し
・集中
・静寂
・平常心
・幸福感
・自己肯定感
などを感じること、その他の心の変容を指します。身体から心にアプローチすることを目的とするものがヨガ以外にそう多くはありません。
良いダイエットや、身体を鍛える方法なら他にもたくさんあるはずです。
心を整えるとはどういうことか:ヨガのテーマと自己肯定感

ヨガとは、身体を通して心を整えるものである。それこそが心のヨガであるとするなら、心のことも学んでみましょう。
身体が整うというのは、物理的なことなのでまだわかりやすいのですが、心が整うとはどういうことでしょうか?
日本ヨガ心理学協会のテーマ「自己肯定感」

心が整うというのは、どういうことでしょうか?
・優しい気持ちになること?
・ポジティブな気持ちになること?
・静かな状態になること?
あるいは人はどうなったら、心が整っていますか?
・お金持ちになったら?
・人気者になったら?
・出世したら?
・結婚したら?
それらは素晴らしいことだと思われますが、これは個々人によります。そうなれば心が整う(幸せになる)人もいれば、それで幸せではなくなる人もいます。
つまり具体的にどんな状態が幸せか(心が整っているか)には答えがなく、どんな状態であれ、本人が「この心の状態が良い」と感じることが幸せな(心が整う)ことだといえます。
言葉にすると、自己肯定感。
日本ヨガ心理学協会が定めるシンプルなゴールです。自己肯定感とは平たく言うと、私はこれで良いと言う感覚です。
ヨガによって心が整うメカニズム

ヨガをしていれば心が整います。
これは身体と心の関係を学ぶことで理解が深まります。ここでは多くを語りませんが、興味がある方は下記をご覧ください。
参考
多くの先生は身体だけに注目しがち

しかしながら、心のヨガと言われるような、身体だけでなく、心の変容が訪れるようなヨガを開ける先生は少ないです。
解剖学やダイエット指導だけで終わる理由
ヨガの指導をしている先生の中で、「心など関係がない。」と言っている人は少ないです。
心のヨガと言われるような、ヨガを開きたい。先生がほとんどであるにもかかわらず、実際には解剖学やダイエットなど体の事しか話していない先生が多いです。
心を整えるヨガレッスンの難しさ

それは単純に、心も心地よいヨガを開催することが難しいからだと思われます。
心と身体の知識を知ることが必要

ヨガをしていると「心と身体はつながっている」という言葉はどこかで聞いたことがある人が多いと思います。
これについては科学的な研究もあるようですが、未だ誰も万人が納得する答えを持っていませんが、ヨガの先生はもちろん、心のヨガが好きな方であれば、そのつながりを学ぶと、自分にとって大切なヨガが明確になると思います。
心に響くヨガクラスを作るための知識

ヨガの先生になった方、あるいは養成講座に通った方はわかると思いますが、解剖学や生理学などから身体の知識を学びますよね。
ヨガでは身体を動かすので、身体の知識が必要だからです。
同じように、これぞ心のヨガだと言えるようなクラスを開きたいなら、心の知識は必要だと思います。
身体と違い心は目に見えないです。だからこそ曖昧になりがちで、言語化や数値化もできないことばかりです。
しかし、受けている側からすると、これぞ心のヨガだ、逆にこれは心のヨガではなく、身体を動かす体操のようなものだと、違いを感じることは事実です。
どんな気持ちでヨガをするのか

先述した通り、心は目に見えないです。だからこそ忘れがちなことがあります。
どんな気持ちでヨガをするのかということです。同じ形のポーズ、同じキープ時間、運動量。
同じシーケンスでヨガをしても、同じではないように感じるのは、どんな気持ちでヨガをしているのかの違いであると言えます。
シャバーサナは顕著に差が出る
ヨガの最後のポーズシャバーサナ。ただ寝転がっているだけ?寝転がってるだけじゃないか。と意味がわからない方も実はいます。
どんな気持ちでヨガをしているかっていうのはシャバーサナにこそ一番差が出るといえます。
この心地よさが好きでヨガにハマる方も多いくらいなのですが。ヨガの先生であれば、ここをしっかりと作れるようになりたいですよね。
参考
ヨガレッスン時の誘導の言葉は大切

協会ではヨガ誘導の言葉に独自の理論があります。
そこでお伝えしていることが、「こころのヨガ」について知りたい人のヒントになるかと思いますので公開します。
ヨガの先生がレッスンで話す言葉をインストラクションといいます。
協会ではインストラクションを2種類に分けて区別しています。
リードの言葉:

ポーズのやり方や、物理的な説明を伝えること。
※身体にアプローチする言葉
具体例:
・両足を前後に開き、カカトとカカトを縦、一直線に立ちます。
・吸う息で、両手を頭の上で合掌。吐くいきで前屈をします。腰が痛い人は無理をしないで。
・〇〇のポーズ。このポーズでは、お腹を引き締め、肩甲骨周りにストレッチを感じます。
誘導の言葉:

生徒さんの「心」や「イメージ」に届く言葉。
※心にアプローチする言葉
・何ら特別ではない自分の体温が、自分を温めていきます。
・丁寧に送った呼吸を身体に送って心地よかった時、身体は何と言っているでしょうか?それは身体の声かもしれません。
・呼吸はそこにいればやってきます。迎えに行かなくても、何もしてなくても。その呼吸はどんな音がするでしょうか?
参考
→【ヨガインストラクター必見】ヨガ誘導の言葉の知識とノウハウを完全解説。
<リードの言葉> と <誘導の言葉>

この区別をしてみてください。これは一般的にヨガの先生も知らない考え方です。(日本ヨガ心理学協会で区別をしていますが、一般的な常識ではありません。)
ヨガのレッスン中で心が動いた経験がある方。その言葉はどんな言葉でしたか?
それは、リードの言葉だったでしょうか?誘導の言葉だったでしょうか?
手前味噌ですが、この知識だけで、衝撃的な気づきとなる方も多いです。
先生の中には「私はリードの言葉しか言っていなかった」という方も多いです。リードしかしていなかったら「こころのヨガ」となる可能性は下がるのは当然ですね。
今までで最高のヨガはどんなヨガでどんな時でしたか?

山梨リトリートの様子
僕は日本ヨガ心理学協会の講師を務めてきて、今まで多くの先生や、一般生徒さんによく質問してきたことがあります。 「ヨガをしてきた中で、これは最高のレッスンだったなぁ」と思ったのはどんなレッスンでしたか?そしてその時、どんな気持ちになりましたか?
ほとんどの人がこのような答えてをくれます。これらはつまり「こころが心地良かった時」です。今まで多くの方にこれを聞きましたが、ほとんどの方がポーズ云々よりも内的なことを答えられます。という意味ではやはり、こころが心地良かった時、人はそれを良いレッスンと感じるんじゃないでしょうか?
繰り返しになりますが、そのようなレッスンのことをここで、こころのヨガと呼んでいます。
参考
→ヨガで自己肯定感が上がる(高まる)しくみ | 「ありのままを愛する」の落とし穴
まとめ
いろいろな種類のヨガがあり、同じヨガでも心が動くようなレッスンもあれば、そうでないものもあります。
心にもアプローチするようなヨガ(こころのヨガ)を開催したい先生がほとんどであるが、それがかなり難しくできる人が少ない。
たくさんの受講生や生徒に、「最高のヨガと感じたのはどんなレッスンでしたか?」と聞くと、大抵は心が心地よかった瞬間です。
それこそが他のエクササイズにはない、ヨガの魅力ではないでしょうか?もしあなたがヨガの先生であればそれを学んで身につけませんか?
読んだあなたが何か参考になったり、気づきがあればうれしいです。